8月も終盤となりました。夏の終わりを感じさせる今にピッタリな、最高のSF青春小説をご紹介します。
『ハローサマー、グッドバイ』は、ひと夏を描いた青春小説のように始まりながら、最後にはSFならではの驚きと余韻を残す不思議な作品です。
舞台は地球ではない惑星、主人公の少年ドローヴは夏休暇で訪れた港町で、以前少しだけ話をした少女ブラウンアイズと再会し、日々を共に過ごすうちに急速に距離を縮める。だが、町では戦争の影が忍び寄り、人びとは対立を深めてゆくなか、ドローヴ達もあらがうことのできない大きな力に巻き込まれてゆく―
主人公は夏の日々の中で、恋や友情、家族との関係に揺れながら少しずつ大人へと近づいていきます。その描写はとてもみずみずしく、懐かしい夏の思い出を語り聞かせてもらっているような心地よさがあります。読んでいると、自分自身の若い日の記憶とどこか重なる瞬間があるはずです。
けれど、この物語はただの青春小説ではありません。舞台となる世界には秘密があり、読み進めるうちにその違和感が少しずつ大きくなっていきます。そして最後に明かされる真実は、読者に強い印象を残し、ページを閉じた後もしばらく心の中に響き続けます。
甘酸っぱい青春の記憶と、SFの大きな仕掛け。まるで二つの異なる物語を同時に味わっているような体験ができる一冊です。派手さはありませんが、その静かな美しさがじんわり胸に残ります。