「はてしない物語」で知られるミヒャエル・エンデの代表作『モモ』。児童書として紹介されることの多い作品ですが、実は大人にこそ読んでほしい一冊です。

主人公は人の話をじっくり聞くのが得意な女の子モモ。モモに話を聞いてもらうとどんな人も前向きになって人生がよりよく進むようになります。

孤児のモモを町の人たちは大切にし、お互いが信頼しあう豊かな関係が生まれているなか、「灰色の男たち」が現れて町の人たちに囁きかけます。無駄な時間を節約して「時間貯蓄銀行」に預ければ利子がつき未来にはもっと多くの時間が手に入るんだと。そうして彼らは効率を求めるようになり、心の余裕やひととのつながりを失っていきます。モモとの会話を楽しむ人もいなくなり、町は殺伐として灰色の冷たい場所に変わってしまいます。

「灰色の男たち」の正体が時間泥棒だということに気づいたモモは、町をもとに戻すため時間泥棒に立ち向かうことになるのです。

「灰色の男たち」の甘言はけして物語だけのものとは思えません。

時間に追われる町の人々、その姿はコスパやタイパが重視される現代を生きる私たちと驚くほど重なります。

効率や便利という言葉に踊らされ、私たちが見逃してしまったかもしれない時間の価値を見直すきっかけを「モモ」は与えてくれます。
この本が生まれたのは1973年。半世紀以上前に書かれた本ですが、常に「いま」読むに値すると思わせてくれる名作です。

一般向けのコーナーで展開するとビジネス書とあわせて手に取られるお客様も少なくありません。それだけこの作品が、単なる児童文学ではなく、「時間との向き合い方」を考える一冊として読まれている証拠だと思います。

もちろん物語としても最高に面白いので幅広い世代で楽しんでもらえる作品です。

今年は「モモ」が翻訳されて50周年にあたり、記念して特別なオレンジのカバーで書店に並んでいます。ぜひこの機会にお手に取ってみてください。

 

モモ
ミヒャエル・エンデ
岩波書店
880円(税込み)円(税込)