2026年のNHK大河ドラマは『豊臣兄弟!』。豊臣秀吉の実弟・秀長を描いた物語です。日頃あまりスポットが当たる人物ではないだけに、どんな物語になるのか今から楽しみですね。
秀吉の立身出世ストーリーの最初から兄を支え続けた秀長。どうやら秀長の補佐能力は極めて非凡なものであったらしく、秀吉を天下人たらしめたのは秀長であるという見方もあるようです。
さて、今回大河ドラマの副読本としてご紹介するのは、今村翔吾の『八本目の槍』。同じく秀吉を強力に支えた石田三成と「賤ヶ岳七本槍」の武将たちを描いた連作短編集です。
一時はとかく悪いイメージが付きまとった石田三成ですが、今では大いに再評価されています。ゲームなどの影響もあって、義に厚い頭脳派イケメンのような印象をお持ちの方も一定数おられるとか。
各編では加藤清正や福島正則をはじめとする七本槍の面々がそれぞれ主役として登場し、小姓時代から関ケ原後まで、石田三成とのかかわりを軸に各々の生きざまや葛藤が描かれます。七人それぞれの視点からだんだんと三成の姿が像を結んでいき、日本の100年先を見据えた深慮遠謀、そして彼が本当に望んでいたことが明らかになっていきます。幼い頃から切磋琢磨し励ましあい、長じて後は裏切り対立しながらも、お互いを想いあうことは決して忘れない「八本槍」たちに、胸が熱くなるのは必至。
この小説に秀長が登場するのはほんの数行だけですが、豊臣家を支えた人たちや時代を取り巻く空気感を十分に知ることができる一冊です。