始めてのライブを観た時、小学生の新木友平は思った。「これと同じこと、俺にもできるんじゃないかって」そして月日は経ち、唯一無二の友と、ヘンテコな形のギターに出会った友平の、バンド人生が今、始まる!!(出版社紹介より)

バンド漫画の金字塔『BECK』のハロルド作石が描く、新たなバンド漫画『THE BAND』。
学校では深刻ないじめを受け、それゆえにギターに没頭していく主人公・友平。手にしたのはカワイ・ムーンサルト、三日月型のボディをもつ独特なギターだ。それは同じくオンリーワンのギター「ルシール」を持つ『BECK』の竜介のように、唯一無二の道を歩むことになる暗示かもしれない。
学校生活において苦しい境遇にあり、それでも自分が信じられる道を見つけのめり込んでいくという流れは『BECK』のコユキと共通している。それは漫画家を目指す少年たちを描いた『Rin』も同様だ。もしこれら2作品と『THE BAND』が同じ要素を内包するなら、注目したいポイントがふたつある。

ひとつは「夢」(睡眠時に見るほう)だ。先の2作品では、夢は重要な意味を持っている。『BECK』ではコユキたちBECKのメンバー全員が、『Rin』では主人公の紀人たちが同じ夢を見、それぞれ未来と過去を暗示していた。『THE BAND』では友平や親友のマタローは同じ夢を見るだろうか。注目していきたいところだ。

もうひとつは「ミューズ」の存在だ。芸術などの創作にインスピレーションを与える人物を指すが、『BECK』のコユキには真帆が、『Rin』の紀人にとっては凛がその役割を担っていた。果たして友平にとってのミューズは現れるだろうか。もしかすると軽音部部長の八木さんか、凄腕ドラマーのカスミンか。それともこれから出会うことになるのか。

いずれにしても『THE BAND』は『BECK』とは違う物語だ。特別な夢など見ないかもしれないし、想像だにしない出会いがあるかもしれない。友平がどんな成長をしていくのか、今後の展開が楽しみでならない。

『THE BAND』は単行本1巻が発売中、第2巻は8月に発売予定。
なお、『BECK』は新装版が刊行中となっている。名作なので一読されることを強くオススメしたい。

THE BAND(1)
ハロルド作石
講談社
792円(税込)