「ウルトラマン」に登場する「ジャミラ」という怪獣をご存じだろうか。
人型でありながら頭部と肩が同じ高さにある特徴的なフォルムの人気怪獣だが、もともとは人間であった。宇宙飛行士だったジャミラは、事故により水のない惑星に取り残されることになる。事故を隠蔽するために祖国からは見捨てられてしまった。救助のないままその異常な環境で過ごすうちに身体が適応し、ひび割れた皮膚をもつ怪獣へと化したのだ。
これも進化といえるだろうか?
『マンアフターマン 未来の人類学』では、このような人類の進化の可能性の数々が収められている。
自然環境の変化への身体的な順応の結果として。環境や社会の悪化に伴う精神的な変化の帰結として。あるいは遺伝子操作や外科手術の産物として。
そのどれもがグロテスクな異形として描かれており、さながら怪物図鑑のようではあるが、綿密な科学的考察の末の未来予想図であるのが面白い。そして、「このような進化を遂げた人類がいるのであれば、更にこのような進化、あるいは分化をするに違いない」という考えが進められており、最終的には500万年後の人類まで描かれている。
1993年に初版が発売された本書であるが、今年になって復刊が実現し、再び手に取ることができるようになった。妖しくも興味深い、一笑に付すにはあまりに考え抜かれている伝説の奇書。ぜひご一読を。