謎の浮世絵師・写楽の正体に迫る!
大河ドラマの副読本にいかが?

2025年の大河ドラマは『べらぼう』。江戸時代の版元、蔦屋重三郎の物語ですね。
でも、蔦屋重三郎、名前は聞いたことがあるけど...と、いまひとつピンと来ていない方も多いのでは。
彼は喜多川歌麿や曲亭馬琴など、綺羅星のごとき江戸文化の寵児たちを見出したことで知られていますが、注目したいのは何と言っても東洲斎写楽との関わりです。
ということで、今回大河ドラマの副読本としてご紹介したいのは、高橋克彦の『写楽殺人事件』です。

謎の絵師といわれた東洲斎写楽は、一体何者だったか。後世の美術史家はこの謎に没頭する。大学助手の津田も、ふとしたことからヒントを得て写楽の実体に肉迫する。そして或る結論にたどりつくのだが、現実の世界では彼の周辺に連続殺人が起きていて――(出版社紹介より)

「東洲斎写楽は誰か?」仮説が乱立し錯綜しながらも、いまだに分かっていない歴史上のミステリです。一年にも満たない活動期間に100点にもおよぶ創作をし、忽然と消えた稀代の浮世絵師・写楽。その正体に迫ることこそが、本書の骨子といえます。主人公が偶然手にした秋田蘭画集から手がかりを得、他の仮説にも触れながら推理を進めていくのは圧巻。そして、その考察に欠かすことができない重要なファクターが蔦屋重三郎であり、本書でも彼について存分に深掘りされています。

写楽=浮世絵大家の別名義説、能役者説、いやいや蔦屋重三郎こそがその人だという説もある一方で、本書では既存の仮説の欠けたところをすべて説明する結論が提示されており、これが真実なのではと思ってしまうことは必至。他にも十返舎一九説や複数人によるプロジェクト説などもある中、ドラマでは一体どのように描かれるのか、期待せずにはいられません。
『写楽殺人事件』は新装版が今年1月の文庫新刊として発売予定ですので、ぜひ。

写楽殺人事件 新装版
高橋 克彦
講談社
957円(税込)