先日発表された第170回直木賞には、河崎秋子『ともぐい』と万城目学『八月の御所グラウンド』が受賞しましたね。特に万城目学さんは6回目のノミネートということで、ファンとしてもうれしい限りです。
ということで、今回ご紹介するのは万城目学のデビュー作『鴨川ホルモー』です。

京都の大学間で密かにおこなわれている謎の競技「ホルモー」。
1,000対1,000のオニ(式神)を使役し戦わせ、勝敗を決するチーム戦である。
京都大学の新入生である安倍は、タダ飯目当てに新歓コンパを渡り歩いていたが、「京大青龍会」なるいかつい名前のサークルの新歓コンパに参加したことで、「ホルモー」の怪しい世界に足を踏み入れることになる。オニ語の習得やサークル内での恋の鞘当など、青春を謳歌する青龍会の面々であったが、「ホルモー」には、世界を破滅に導くほどの隠された禁忌があるのだった...

ストーリーの面白さもさることながら、なんと言っても登場人物の造形や細かい設定が素晴らしい。
主人公の安倍は京大に2浪して入学と、秀才なのかそうでないのか何とも言えない一方で、重度の「鼻フェチ」であり、さだまさしを「まさし」と呼びこよなく愛するなど、ぱっと見の凡庸さと裏腹にとがった個性が鈍く光ります。
チームメイトの高村は敗戦の責任を感じて反省するあまり髪型をちょんまげにしてしまうし、瀕死のオニを蘇生させるための手段がレーズンを食べさせるなど、理由を問い詰めたくなる設定が読んでいていちいち楽しい。

2009年に映画化もされています。主人公・安倍役は当店にもお越しいただいたことのある山田孝之さん。チームの要であり卓越した戦術家であるヒロイン(?)の楠木役は、一昨年金沢百万石まつりでお松の方役も演じられた栗山千秋さん。
実は金沢と遠くて淡い関係がある作品なのです。

鴨川ホルモー
万城目学
KADOKAWA
858円(税込)