「黒幕」と聴けば、裏側から社会を牛耳る存在を思い起こすものである。どちらかといえば、ダーティーなイメージが付きまとうものでもあろう。

 

 しかし、歴史の中における「黒幕」の存在を紐解けば、それは、時の権力者に寄り添いながら、新しい社会のありようを形作ってきた、いわば「プランナー」としての役割が大きく垣間見える。

 

 本書、『黒幕の日本史』は、その名の通り「日本の歴史」において、古代から近代にいたるまでの16人にスポットをあてて、その当時に必要だった「プランニング」をあぶりだし、裏側の視点から歴史を眺めるものである。

 歴史に興味はなくとも、「教科書」を通して誰もが耳にしたことのある偉人のほかに、相当な「歴史通」でも、よほどのことがない限りは、知る機会など全くないであろう人物にも焦点があたっている。

 表舞台に立つことはなくとも、その16人が成し遂げた事績は、「黒幕」として間違いなく「歴史」の土台骨を作り上げてきたといってよい。

 

 そんな「黒幕」たちがいるからこそ、歴史の「妙味」はさらに深みを増すのである。

『黒幕の日本史』
本郷和人
文春新書
902円(税込)