新年を迎え、大河ドラマもまた新しい物語が幕を開いた。

 

主人公の名は「徳川家康」・・。

言わずと知れた、戦国の時代を終焉に導き、「江戸幕府」を開闢して、その後300年に渡る平和な「江戸時代」の礎を築いた偉人である。

 

その彼が生き抜いた時代は、権謀術数が渦巻き、親兄弟同士でさえも相克しあう、まさに「乱世」の渦中であった。

後に「勝利者」となる家康もまた、その乱世の波の中、明日をも知れぬ戦いを繰り広げてきたのである。

 

そして、その家康を支えぬいたのが、旧領・三河からの譜代家臣たち・・すなわち、「三河家臣団」の面々であった。

『新三河物語』は、その「三河家臣団」の一角である「大久保一党」が主軸となって、家康の事跡を主従ともに追いかける物語である。

 

本作のモチーフとなっている『三河物語』は、その大久保氏に連なる「大久保彦左衛門」の名で著名な、「大久保忠教(おおくぼただたか)」が著した大久保党の一代記である。

 

大久保一党がいかにして、主君の家康に忠義を尽くし、その事業の達成に貢献してきたか・・。

そして、果たしてきた忠節にはそぐわない扱いをうけてしまう大久保一党の悲運の物語を、歴史小説の大家「宮城谷昌光」がその渾然たる筆致にて、『新三河物語』として新たに書き起こしている。

 

大河ドラマ『どうする家康』は、その家臣たちの動向にも注目が集まっている。

本書を通して一足先に、大久保一党の活躍を追いかけてみるのも、一興といえるだろう。

『新三河物語』
宮城谷昌光/著
新潮社
上巻・中巻 781円(税込)   下巻 681円(税込)