戦後間もない沖縄。
若き精神科医エドワードは軍医として赴任した沖縄で戦争のトラウマに苦しむ米兵の姿を目の当たりにします。
唯一の楽しみは休日にドライブに出かけること。

そんなある日ドライブ先で彼は若い芸術家たちが集い住む「ニシムイ芸術村」にたどり着きます。ここから物語は怒涛のごとく動き出します。
自らも絵をかくエドワードと画家たちはアートという共通言語で友情を深めます。けれども彼らの間には常に戦争の勝者と敗者という複雑な立場が存在するのです。

エドワードをはじめニシムイ芸術村の画家たちなど多くの登場人物にはモデルがいて著者の原田マハさんは関係者にインタビューをして作品を作り上げたそうです。

私は戦後の沖縄に芸術村があったことも知らなかったので、驚きと同時に戦後史を知らなさすぎる自分への恥ずかしく思いました。
でもそれ以上に大きかったのはこの作品に出会えた喜びです。

芸術に対する情熱と沖縄の夏の暑さ、そして壮絶な歴史が読む側の胸に迫ってくる作品です。 

今年の5月15日は沖縄返還50年という節目になります。ぜひこの機会に読んでもらいたい一冊です。
太陽の棘
原田 マハ/著
文藝春秋
704円(税込)