世界は今、揺れている。誰もがそう感じているであろう。

 

 そして、大国のエゴによって始まった世界情勢の混迷を鑑みてか、俄かに脚光を浴びているのが、この1冊である。

 

 著者の岡田斗司夫氏は、アニメ会社「ガイナックス」を創立したものの、その会社を追われ、その後はアニメや漫画・ゲームなどの「空想の世界」に関する様々な事物を、独特の見識によって考察と評論を重ねてきた、知る人ぞ知る「オタキング」である。

 

 そんな岡田氏が、「空想の世界」では必ず付物となっている「悪の集団による世界征服」について、現代につながる実在の歴史と、本当に「世界征服」をした場合の現実に起こりうる諸問題などを照らし合わせて、ひとつの結論を導き出している。

 

 「征服する」ということは、単純に「領土」だけではなく、「政治」「文化」「思想」など、人類が持ちうる「社会」そのものを「国家」の名のもとに単一化することであり、それを遂行・維持ための「労力」と「経済力」が膨大なものになることは、容易に想像できる。人知を超えるような力を持った「空想上の国家」であったとしても、そのことは避けえない事実である。

 

 「世界征服」そのものは、極端に言えば「可能」であろうし、それに近づいた強力な国家も歴史上には存在していた。しかし最終的に、「征服したはずの世界」を保持することはできず、泡沫のように消え去っていったのもまた、歴史の真実である。

 

 


『世界征服』は可能か?
岡田斗司夫
筑摩書房
858円(税込)