「反出生主義」という単語を、私が初めて目にしたのはごく最近のことだったと思います。
反出生主義とは簡単に言ってしまえば「人は生まれてこない方がいい・産まない方がいい」というもので、
突き詰めては「人類は消え去るべき」と考える人もいるようです。
ここ数年、特にSNS上でこういった主張を口にする人が多くなっているとのことです。

この「ただしい人類滅亡計画」は、その反出生主義の考え方を知るはじめの一歩として最適です。
突如降臨した魔王が、人類を滅亡させるかどうかを10人の人間の話し合いによって決めさせるという内容で、物語はその人間たちの議論による対話形式となっています。

議論の余地もなく滅亡すべきでないと結論付けようとした人間たちですが、参加者に1人反出生主義者のブラックがいたことから話し合いはこじれていくことになります。
滅亡反対派はブラックの意見を否定しようと試みますが、彼は一向に譲りません。
それどころか他の人間たちが普段信じている価値観や道徳心からそれることなく『だから人類は滅ぶべき』と導き出せる、と説くのです。
物語の最後に人間たちはどのような結論を出すでしょうか。

「生きていることは素晴らしい」 「生まれてこない方がいい命なんてない」
考えるまでもなく正しいことのようにも思えますが、なぜそうであるかうまく説明することができますか。
本書を読み終えた後、あなただったらブラックの意見にどのような反論ができるでしょうか。
もしくは同調してしまうでしょうか。ぜひ考えてみてください。

ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語
品田 遊
イースト・プレス
1,760円(税込)