恐竜をはじめとする、古代生物たち。
もしそれらが絶滅することなく、進化を続けていたら?
そんな"if"を、生物学の見地から真剣に考えた思考実験の集大成、それが本書『ifの地球生命史』だ。

考えられないほど長く鋭いトゲを全身に備えた、超攻撃的三葉虫ヴァロプス・カラルマータ。
翼竜の翼が完全に退化し、いびつな四肢で地上を跳ねまわる、マレオダクティルス・ルキフェル。
足の進化と手の退化を重ね、冗談のようなずんぐり体系を獲得したティラノサウルス、メガビュービス・アケイルス。
そして"if"の進化の果てに、現実とは大きく異なる姿となったイヌ・ネコ・ペンギンなどの現在を生きる動物たち。

進化の系統、生態、環境要因など様々な視点から導き出された古生物たちの進化後の姿は、いずれ劣らずインパクトが大きい。CGによる細密なビジュアルが、目にも衝撃を与えてくる。
学名までつけられているあたりに、著者の本気がうかがえるだろう。

だが、本書に「ヒト」の記述はない。
もし恐竜が絶滅していなかったら?本書の"if生物"たちが本当にいたら?
我々もまた違った進化をしていただろうか――

本書を読んだ後には、そんな思考実験をしている自分を発見するはずだ。

ifの地球生命史
土谷健/著 服部雅人/イラスト 藤原慎一・椎野勇太/監修
技術評論社
3,520円(税込)