闘蟋・・・どう読むか分かりますか?


正解は「とうしつ」。秋にオスのコオロギを闘わせる遊びです。その歴史は唐の時代から続いており、2015年にも賭博で40人以上が逮捕されているなど現代でも廃れていません。

映画「ラストエンペラー」でも玉座に隠したコオロギのはいった壺を取り出すラストシーンからも、闘蟋の人気は皇帝から一般庶民まで幅広かったのだと分かります。

 

この作品の主人公バービーも多くの中国男性と同じく闘蟋に興じる一人ですが、「クソ虫なんざしょせん金儲けの道具なんだよ!」と豪語し大事な商売道具であるコオロギを足蹴にするなど、主人公としてまったく好ましくない人物です。

ですが、闘蟋にはまって身を持ち崩す人間を横目にバービーは我が道を貫き通します。 女好きで大酒飲みで金遣いも荒い、欠点だらけなのになぜか憎めないカラッとした魅力があります。

 

日本では鳴き声が風流な生き物として認識されているコオロギを闘わせることができるの?と不思議に思われる方も多いのではないかと思います。ところがコオロギのオスはひとつの箱にいれるとケンカを始める闘争本能の強い生き物だというんです。

強いコオロギは1匹100万円で取引されることもあるとか。

けれどもどんなに強いコオロギを手にしていても、それはひと秋だけのこと。秋が終わればまたいちから新たなコオロギを求めなければなりません。夢が覚める瞬間ですね。

この作品もそんなすべてが幻だったような感覚に陥る読後感があります。異文化を学べる一冊でもあります。

B/W
渡邉 紗代/著
KADOKAWA
880円(税込)