もしも、女性が男性を食べないと妊娠できない世の中になったら?

 

昨年、WEB上で発表され大きな話題となった短篇『ピュア』は遠い未来、人工衛星で暮らす女性たちを描いたディストピア作品です。

 

あらゆる環境にも耐えられるよう遺伝子操作によって変態した女性が国を守り、男性は昔からの姿のまま労働に勤しむ、男女の関係が逆転したような世界では女性が妊娠するためには文字通り男性を「食べる」ことが必然となっています。

セックスを「狩り」と称して、義務化された妊娠のため、女性はひたすら男性を貪り続けます。


 

そんな衝撃的な世界で生きる主人公ユミがエイジという男性と出会います。食べる側と食べられる側の二人が恋に落ちるとどういう結末を迎えるのか・・・。 

 

残酷でグロテスク。なのに胸が締め付けられるほど美しい「ピュア」な世界です。

 

表題作の他にも『バースデー』『幻胎』など「生きづらさ」を抱える人々を描いた作品が収められています。

どれも未来を舞台としたSF作品ですが、SFであることで小説の世界が現代人の性差による生きづらさをデフォルメしていると分かるのでより作者の意図が強く伝わってきます。

ピュア
小野 美由紀/著
早川書房
1,870円(税込)