精緻な絵と、他にはない不思議な作風の絵本作家、

junaida氏の新刊です。

「の」とは、日本語の助詞の「の」です。

 

おはなしは表紙の裏側から始まります。

遊び紙も何もない、無駄のないつくり。

中のページは表紙と同じサイズに裁断されて、普通はある天地のへこみは存在しません。

この本には、表表紙から裏表紙までぎっしりと物語が詰まっているのです。

 

最初のページで「わたしの」からはじまり、

次に「お気に入りのコートの」、

そして「ポケットの中のお城の」と続いたところで、

あなたはもう、不思議で終わりのない世界に迷い込んでいます。

 

「の」で次々につながっていく幻想的な世界を形作るのは、

素敵としか言いようのない、緻密でいながら体温を感じさせる絵です。

一枚一枚が、部屋に飾っていつまでも眺めていたくなる。

 

円のように循環するかと思いきや、

少し軌道をずらして物語を終える様子は、

「の」の形そのものに思えます。

 

junaida著 『の』
junaida
福音館書店
2,200円(税込)