「こうてくだ、こうてうだ」

 

 輪島市で開かれる朝市は、「日本三大朝市」のひとつにも数えられ、その起源をさかのぼると、平安時代に行き着くほどの伝統を持っています。

 その日、海でとれたもの、山でとれたもの、畑でとれたものが店に並び、「こうてくだ、こうてくだ」と、能登の言葉が行きかって、道行く人々の関心を集めていたのです。

 朝市で隣り合った人同士が、それぞれの近況を語り合い、自分が売っていたものを交換し合う。そんな風景が、毎日途切れることなく繰り広げられていたのが、「輪島の朝市」でした。

 

 ・・2024年1月1日。能登を震源とした大地震を原因とする火災により、輪島の朝市は往時の姿を失いました。その衝撃的な光景は、地元の人ならず、目に焼き付いていることでしょう。

 それでも、「朝市の復活」を願い、金沢・金石港にて「出張朝市」が開催されることになりました。復興に向けての一歩を、踏み出したのです。

 

 

 この「あさいち」は、1970年代の輪島朝市の様子を丹念に取材し、その時の光景をそのままに写し取ったかのような絵本です。「語り」としても、朝市に参加している人たちの声が、そのまま文章となっています。当地の生活の息吹が、ありありと感じられます。

 また、「あさいち」を刊行した出版社「福音館書店」は、石川県金沢市を創業の地としており、復興活動の一環として、往時の輪島朝市を描いたこの絵本を復刊しました。

 

 ぜひ、「あさいち」の活気を、絵本の中からも感じていただきたいと思います。


『あさいち』
大石可久也/え 輪島・朝市の人びと/かたり
福音館書店
1,100円(税込)円(税込)